1) 梅の新名所「鈴鹿の森庭園」

梅についてあなたがもし何か一家言を持っている人ならば、その評価を確定する前に是非三重県の鈴鹿にある「鈴鹿の森庭園」へとおもむいて欲しい。2014年に開園して、今年まだ3年目のこの庭園は、周りにあまり目立った観光地もない鈴鹿という土地のど真ん中に、忽然と現れた桃源郷のような梅の一大聖地として徐々に名前が知られ始めている。 私自身は開園2年目にあたる2015年に、初めてその圧倒的な梅の数々を見た。そこで撮影した写真は、後に2年目の渋谷ヒカリエで催された写真展のメインの一枚に選ぶことになった。それがこれだ。

この写真を撮影した時、私は自分でも少し驚いてしまったのを覚えている。今まで考えていた「梅」のイメージを根幹からひっくり返すような圧倒的な枝ぶりと威容。この一本の巨大なしだれ梅にどれだけの手と時間がかけられているのか、その一端が写真からもわかるような気がしたからだ。写真展で多くの人がこの一枚の前で足をとめてくださって、「素晴らしい桜の木ですね」と感想をいただく度に、「いえこれは実は梅でして・・・」と何百回も説明したのが懐かしい。梅に見えないほどに圧倒的な枝ぶりを初めて見たときの驚きは、いまだに私の中にしっかり残っている。

このような、ほとんど常軌を逸しているほど端正に育てられた梅の巨木が約200本、園内ところ狭しと並べられている。それが「鈴鹿の森庭園」である。

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大体毎年2月の後半から3月の中旬、ちょうど桜が開花する前頃までが見頃とされている。写真フォルダーに残っている写真を見返してみると2015年は3月20日前後、2016年は3月8日前後が最も美しかったようだ。年によって随分満開の日が前後するが、そこは公式サイトが運営しているTwitterで開花情報を逐次知らせてくれるので、そちらを参考にして欲しい。

「鈴鹿の森庭園」公式Twitterはこちら

2) 万華鏡のようなバリエーション

とはいえそんなに広くない庭園で、一体何が撮れるのかといぶかる方もいらっしゃることだろうと思う。私も現地に行くまでは、「言うて、梅っしょ?梅っしゅよね?」とか思ってたクチで、梅が200本集まったところで大したバリエーションもないんじゃないかと思っていたのだけれども、これがすごく面白い。改めて自然の作り出す「形態」の面白さに目を奪われるし、まだそれほど「定番構図」もないので、自分がその場で考えなければならない面白さを十分に堪能できる。それが意味するのは、もしかしたらあなたが撮る一枚が、これから「定番構図」として語り継がれる一枚になりうる可能性があるということだ。ここ「鈴鹿の森庭園」は、まだそこまで有名になっていないので、園内をゆっくり鑑賞しつつ撮影できる。これは、情報がすぐに拡散する昨今では珍しい。

例えば半径数メートルの中でこれだけ違う写真を撮ることができる。

この三枚の写真は、誇張ではなく半径5メートルくらいの中に立っている梅を切り取ったものだ。太陽の状態、その日の開花状況、持っているレンズのタイプなどなどで様々な表現が可能となる。

3) 自然と人、その交わるところ

こういう広々とした場所に一本だけ巨大な梅の木というのも、「庭園」ならではの趣向だ。つまりこの場所は、「自然」と「人間」、あるいは「文化」とが混じり合った場所なのだ。この場所を作った人間の「意図」と「意匠」を汲み取ったり、あるいは敢えて無視したりすることで、新たな表現の可能性を探る場所だと言える。自然相手の風景写真とはまた違う思考回路が要求される。すでにそれ自体に「意図」があって作られているものを、カメラを通じてさらに美しく表現するというのも、写真という芸術の奥の深さだ。

4) 定番を作り出す

さて、もしこれを読んでくださっている読者の方が、「よし、今年行ってみよう!」と思われたなら、一つお願いがある。この場所の「全景写真」の傑作を私は見てみたいのだ。私がこの場所で撮影出来た写真は、ここまで見て頂いた写真のような近接から中距離くらいのものばかりで、一番広い画角の作品でも次の写真くらいの広さのものしかない。

ここに来て最初、皆さん大体まず、園内全体を見渡せる「展望広場」のような場所に向かわれるのだが、ここからの写真が極めて難しい。私は二年間で合計6回ここに通ったのだが、残念なことに全景写真では何一ついいものが撮れなかった。そして未だここの全景写真の傑作は、私の知る限りあまり出ていないんじゃないかと思っている。是非皆さんに、度肝を抜く傑作全景写真を撮って頂きたいと思っている。

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