今のカメラメーカー、レンズメーカーが製造・販売を行なっているレンズの名称は、正直なところ初めて見た人には厳つい印象や、妙に長ったらしい記号やなんだかよく分からない暗号のように見える名前になっているかもしれません。

今のところレンズに相性のような、名前らしい名前を付けるメーカーはごくわずかしかありません。

その代わりと言ってはなんですが、ほとんどのレンズはレンズの名前からレンズのスペックの多くの部分を読み取ることが出来るようになっています。

ここの読み方をマスターすると、レンズの性能が良さそうとか、オートフォーカスのスピードが速そう、などといった写真を撮る上でかなり重要な情報を、あらかじめレンズの購入前にだいたい予想することが出来るようになります。

この記事では、そういったレンズ名の読み方の代表的な部分を説明していきます。

その知識を活かして、交換レンズ入手の際の製品選びを楽にしたり、購入に伴う不安の解消につなげていきましょう。

キヤノンのレンズの例でレンズのスペックを読んでみる

まず最初にキヤノンの代表的なレンズの名前からそのレンズのスペックを読んでみましょう。高性能望遠ズームレンズの「EF100-400mm F4.5-5.6L IS II USM」を使ってみます。

こちらのレンズだと以下の図のような分け方で名前を読んでいきます。

最初の「EF」がレンズのマウントの形式です。

キヤノンには「EF」「EF-S」「EF-M」の3種類があって、「EF」は35mmフルサイズセンサー対応の一眼レフ用レンズを表しています。「EF-S」はAPS-Cサイズセンサー対応の一眼レフ用のレンズ、「EF-M」はAPS-Cサイズセンサー搭載のミラーレス一眼用レンズを示しています。

次の数字がレンズの実焦点距離です。

このレンズはキヤノンのAPS-Cサイズセンサー搭載カメラに取り付けると、160mm~640mm相当の働きをするレンズになりますが、でも一般的にはレンズの名前としては「換算焦点距離」ではなく「実焦点距離」をつけることが慣例になっています。

次の「F4.5-5.6」はこのレンズの開放絞り値です。数字が二つあるのは、ズームして焦点距離を変化させると開放絞り値も変化するタイプのレンズだからです。二つの数字の間で連続的に値が変わっていきます。

「L」の文字はキヤノンの高性能ラインのレンズを表す証となっています。

「II」は、このスペックを持つレンズの2代目、バージョン2、と言った意味ですね。

最後の「USM」はオートフォーカス駆動用のモーターの種類を表しています。USMはUltra Sonic Moterの頭文字を取ったもので、超音波モーターのことを表しています。

他のメーカーのレンズもだいたい同じようなコード・記号的なものの集まりで出来ています。キヤノンのこのレンズの例と同じように、名前を分解して読んでいくことでスペックが見えてきます。

さて、このあと各メーカーのレンズの名前に含まれているコードから、重要なスペックを表すものをいくつか取り上げて説明していきます。

マウントの種類

1つのメーカーで物理的に複数の形・大きさのマウントを持っているのは、ニコン、キヤノン、ソニーなどです。

キヤノンは前の章で説明したとおり、3種類のマウントがあります。

ただ、EFとEF-Sが変わった作りになっていて、一見しての物理的な形はほとんど同じなのですが、APS-Cサイズセンサー搭載一眼レフにEFレンズは取り付けが出来るものの、35mmフルサイズセンサー搭載一眼レフにはAF-Sレンズが取り付けできない工夫がされています。

ニコンはミラーレス一眼をレンズ交換式カメラとしては小さめの1型センサーで作っていますので、レンズのマウントが同社の一眼レフとは全く異なります。

一眼レフ向けのレンズはNIKKOR(ニッコール)レンズで、ミラーレス一眼向けのレンズは1 NIKKOR(ワン ニッコール)レンズです。

ソニーは一眼レフ用のマウントを含む資産をミノルタから委譲されました。その血を受け継ぐ一眼レフ用のレンズはAマウントのレンズと呼ばれますが、Aマウント用レンズには頭にマウントを表すコードが何も付きません

ミラーレス一眼向けには、Aマウントの仕様を使いつつサイズを縮小したEマウントを使っています。

Eマウント用でAPS-Cサイズセンサー搭載カメラに適合するレンズには頭にEの文字がつきます。Eマウントで35mmフルサイズセンサーにも対応できるレンズは、頭にFEがつきます。

オートフォーカス駆動用モーター

今のレンズ交換式のカメラのレンズでは、オートフォーカス駆動用モーターがかなり重要なポジションを占めています。このモーターの特性や性能によっても、カメラがピントを合わせる速度に大きな影響が出ますし、オートフォーカス動作時のノイズの大きさにも深い関連があります。

一般的には古いタイプに当たる「DCモーター」を使うレンズは、オートフォーカス時のピントを送る速度が遅めになります。対して、新しいタイプの「超音波モーター」や「パルスモーター」「ステッピングモーター」「リニアモーター」を使うレンズでは、静かで速く、スムーズなオートフォーカス動作が出来る製品が多くなります。

カメラメーカーによって、オートフォーカス動作用のモーターをレンズ側に持つか、カメラ本体に持つかで二つの派閥があります。ですが、元々カメラ本体にモーターを付けていたメーカーも、今はレンズ側にモーターを持つ方向に仕様が変化してきています。

レンズ側にモーターを持つとレンズのサイズは大きくなりがちなのですが、その代わりオートフォーカスのスピードを上げやすくなるためです。

ちなみにカメラ本体のオートフォーカス駆動用モーターを使うと、多くの場合比較的大きめの駆動音が出てしまいます。

では、以下に、メーカーごとにモーターの種別を表すコードをまとめていきます。

超音波モーター キヤノン USM
ニコン レンズ名からは分からない(カタログなどではSWM)
ペンタックス SDM
ソニー SSM、DDSSM(最近のレンズ名には付かなくなってきている)
シグマ HSM
タムロン USD
パルスモーター ペンタックス PLM
ステッピングモーター キヤノン STM

モーターの種類的にはパルスモーターとステッピングモーターは同じものです。

動画撮影の際には、オートフォーカス駆動音が静かなモーターは使い勝手の面で重要な要素になります。動作音が大きいと、動画撮影中にオートフォーカスが動いたとき、その動作ノイズも一緒に録音されてしまうためです。

光学式手振れ補正機能

手振れ補正機能も今では随分と一般化した存在になりました。

この機能もメーカーによって複数のやり方があり、レンズで補正を行なう「光学式」。カメラ側でイメージセンサーを微細かつ精密に動かすことで行なう「イメージセンサーシフト式」。レンズ交換式カメラでは採用は少ないのですが、微妙なトリミングを行なってその枠を電子的に動かすことで手振れを減らす「電子式」があります。

このうちレンズ側で補正を行なう光学式手振れ補正を表すコードが、レンズに付けられています。

キヤノン IS
ニコン VR
ソニー OSS
パナソニック OIS
オリンパス レンズ名には付いていないがカタログに「シンクロ手振れ補正対応」の表記があるレンズには光学式手振れ補正機能あり
シグマ OS
タムロン VC

 

ペンタックスはイメージセンサーシフト式手振れ補正だけを使いますので、レンズ側に手振れ補正機能を持つレンズがありません。

ソニーやオリンパスはイメージセンサーシフト式の手振れ補正機能を使ってきました。今はそれに加えてレンズ側の光学式手振れ補正機能を併用することで、より手振れ補正能力を高める仕組みを採用し始めています。

パナソニックは逆のアプローチで、元々はレンズ側の光学式手振れ補正機能を使っていました。あとからイメージセンサーシフト式も追加することで、やはり手振れ補正能力の向上を図っています。

ちなみに光学式手振れ補正機能のメリットは、光学式ファインダーを持つ一眼レフのファインダーでも手振れ補正の恩恵にあずかれるところです。

超望遠レンズなどを使う際に、被写体を捉える続ける難易度がものすごく下がります

今ではイメージセンサーシフト式の手振れ補正機能を使うミラーレス一眼でファインダーを見ている際にも手振れ補正効果が利用できる機種が増えてきたため、このメリットは光学式の絶対的に有利な点ではなくなりつつあります。

高性能レンズの証など

高性能レンズに特定のコードを付けて差別化を行なっているメーカーもあります。上で例に使ったレンズで使っているキヤノンの「L」の文字などが代表例です。

ソニーのレンズの「G」や「GM」、若干方向性が異なる部分もありますがペンタックスの「Limited」も同じように高性能レンズの証です。

オリンパスのレンズの「PRO」「PREMIUM」もレンズのグレードを表す名称で、光学性能はPRO=>PREMIUM=>無印の順番になります。

シグマではEXのコードが付くレンズが高性能の証となっていましたが、レンズのラインアップのポリシーが変更になっています。これからEXシリーズの性能を受け継ぐレンズは「Art」シリーズのレンズになっていくと思われます。

タムロンでは「SP」の名を持つレンズが高性能の証です。

そのほかにもいくつか、機能面からレンズの高性能ぶりをアピールするようなコードがあります。代表的なものが「ED」でしょうか。

これはExtra-low Dispersionの略で、レンズの「色収差」効果的に減少させることが出来る特殊な性質を持った光学ガラスのことを指しています。その特殊なガラスを採用したレンズを搭載した製品に付けられます。

メーカーにより呼び方が異なっていたりしますが、LD、SLD、UDなどの略称も同じ意味で使われます。

他にも各種の収差の補正に有効な「非球面レンズ」を示すコードもあるのですが、EDガラス製レンズと同様に、非球面レンズも製造プロセスの進化でごく当たり前に使われるものに変化してきています。

その関係から、新しいレンズではEDガラスを使っていたり非球面レンズを使っていたりしても、特にそれを明記しないレンズの方が多くなりました

まとめ

ドイツの有名光学メーカーであるツァイス社の新しい交換レンズはOtus、Batisなど、愛称と言いますか名前らしい名前の付く製品になっていて、こちらの方が使う上では愛着がわきやすいかもしれません。

ですが日本ではレンズの特定の焦点距離自体にブランド力が生じるような形になっています。

たとえばポートレート用レンズならば85mm、望遠ズームならば70-200mmと言ったように、機能そのものである焦点距離の数字が一種ブランドのような扱いをされている部分あります。

そんな日本のカメラユーザー向けには、実は、一見暗号のような味気なくも見える今のレンズの名前がマッチしているのかもしれません。

今回説明してきたとおり、この名前の付け方にもきちんとメリットがあります。そういった部分をうまく利用してレンズ選びを楽にしていきましょう。