ずっと都会に住んでいる人たちの憧れの一つに「天の川」があるかもしれませんね。とても淡い光で、都会の空ではまず見ることが不可能です。

今は地方都市でも街の灯りがとても明るくなっていますので、よほど条件の良い時でなければ市街地で見ることは難しくなってしまっています。

実際、天の川は写真を撮る上でもなかなかの難関で、条件の良い場所・良いタイミングでないとなかなか写ってくれません。

この記事では天の川や星の撮り方の基本をまとめていきます。

星を写す写真の撮り方

まず最初に星を写す方法の基本部分を載せておきます。

実は撮影方法自体はとても単純で、「露出をたくさんかける」だけです。

ISO1600~3200、絞りF2.8、シャッタースピード15秒ぐらいの設定で、条件の良い場所であれば天の川はかなりはっきりと写し取ることが出来ます。

長時間シャッターを開きっぱなしにしますので三脚は必須。また無用なブレを防ぐために、リモートケーブルやリモコンがあった方が何かと楽が出来ます。どちらもお持ちでない場合にはセルフタイマーを活用しましょう。

撮影方法自体はたったこれだけのことではあるのですが、実際に写そうと思うとなかなか思い通りにはなりません。以下でその難しい理由などを説明していきます。

星の撮影の「敵」は

防犯上などの観点から今は街灯がとても明るくなりました。メインストリート以外の住宅街用の灯りにもLEDが使われるようになり、セキュリティ面では安心感がとても高まっています。

ですが、星を撮影する場合にはこの街の灯りが意外な敵になります。

これぐらいの街灯の明るさの場所で(ISO1600、シャッタースピード1/3秒、絞りF2.8)、

ISO1600、絞りF4.0、シャッタースピード15秒の設定で空を写すと、夜空はこんな写りになってしまいます。

夜空の雲がはっきりと写り、背景がかなりの明るさのグレーの写りになってしまいます。ちなみに、左下に写り込んでいるのは著者宅の電線です。

人口3万に満たない地方都市の空でも今はこんなに明るくなっているのです。

星の撮影に関しては街灯りは「光害」などと呼ばれたりすることもありますが、防犯を考えると一概に街灯を邪魔者扱いすることは出来ませんから、なにかと難しい部分ではありますね。

アメリカなどには「Dark Sky City」などの宣言を行なって夜の街灯の工夫をすることで、星空・暗い夜空を守る街もありますが、なかなか導入は簡単にはいかないお話でしょう。

難関、天の川を撮るには

前の節で書いたとおり天の川や星の撮影の大敵は街の灯りです。ですので、できるだけ郊外で街の灯りを遮ることが出来る場所を探すことが第一になります。月明かりのない夜を選ぶことも大切です。

また、撮影の際のセッティングの作業などが大変になりますが、そばに街灯がないことも重要です。直接レンズに光を入れなくても、ゴーストやフレアなどが発生して写りを悪くする可能性があります。

さらに目の視野に灯りが入ってしまうと瞳孔が開ききらず、肉眼での星の確認が難しくなります。(街で天の川が見にくい理由の一つもコレです)

まずはそういった場所を探すことから始めましょう。

いいロケーションが見つかったらあとは比較的簡単です。三脚にカメラを固定して長時間露出を行なうだけでだいたいはOK。それほど難しいセッティングも必要ありません。

セッティングを行なう項目としては、ISO感度は1600~3200程度にセット。35mmフルサイズセンサー搭載カメラならばISO3200~6400も使えると思います。

使うレンズは標準レンズ~超広角レンズが良いでしょう。

絞りは出来ればF2.8までに留めたいところです。ですので、できるだけ開放F値が明るいレンズの方が星の撮影には適しています。

レンズの残存収差や周辺光量の関係から、開放F値F2.0のレンズをF2.8まで絞って使う方がトータルの写りは良くなります。

ちなみに、かつてはズームレンズは星の撮影なんてもってのほか、というのが常識でしたが、今の開放F値が2.8固定などの高性能なズームレンズならば、多くのレンズで全く問題なく星の写真が狙える性能があります。

シャッタースピードは15秒が基本になります。

フィルム時代は15秒露出しても星はほぼ点に写りましたが、高画素でシャープな写りをする今のデジタルカメラだと、標準レンズでの8秒露出でも星が少し日周運動で移動していることが見えるぐらいの写り方をします。

この部分はレンズの焦点距離と写り具合を見ながら調整しますが、天の川狙いであれば28mm相当のレンズで30秒露出ぐらいが適当かもしれません。

ピントはマニュアルフォーカスにして無限遠付近に置きピンが基本なのですが、今のオートフォーカス用レンズは無限遠の部分に幅があるのがちょっと困るところです。

ライブビューで星が確認できるならば、できるだけ丁寧にピントを合わせてやると結果が良くなります。ライブビューで星が確認できないときには、少しずつピント位置をずらしながら複数の写真を撮って結果の良い場所を探すと良いでしょう。

天の川自体は日本からは南の地平線際、星座で言えば射手座の方向が一番明るい場所になっています。南側に街明かりがない場所であれば、地平線を少し画面に入れ込むぐらいで南にカメラを向けると天の川を写しやすくなります。

南に灯りがある場合は、天頂に近いあたりの「夏の大三角」、はくちょう座付近の天の川も比較的写しやすい部分です。天の川自体の明るさは少し落ちますが、空の高いところまで上ってくれますので街灯りの影響を受けにくくなります。

はくちょう座付近の天の川でかなりうっすらとしか写っていませんが、著者の住む街の住宅街のど真ん中だとこの辺りが限界です。

もっと星をたくさん写すには

街灯りの影響がとても少なく空が暗い場所であれば、機材の追加でもっとたくさん星を写し込むことも出来ます。

そのためには星の日周運動をキャンセルする、または、追いかけていける装備が必要です。

一般的には「赤道儀」という天体望遠鏡のための装置を使います。今は、小型のカメラで写真を撮る、その目的専用に作られたとてもコンパクトな赤道儀も販売されています。

ケンコーの星空撮影向きの赤道儀のページ

また、ペンタックスのデジタル一眼レフならば「アストロトレーサー」機能を使う方法もあります。アストロトレーサーは、イメージセンサーシフト式の手振れ補正機能を活用する形で、イメージセンサーを少しずつ精密に動かし星の動きを追尾する機能です。赤道儀の代用が出来ます。

より暗い星まで止める形で写し取りたい場合には、これらの機能を活用して星の日周運動を追いかけつつ長時間の露出を行ないます。

今のデジタルカメラであれば、数分~10分程度シャッターを開けっぱなしにすれば、ものすごくたくさんの星を写し込むことが出来ます。

都会でも「らしい」星の写真を作るテクニック

都会の夜空だと天の川の撮影は諦めないといけませんが、一部の明るい星だけならば比較的簡単に写し取ることが出来ます。(1等星、2等星ぐらいだとカメラの感度を上げれば、ギリギリ手持ち撮影でも写ります)

都会の夜空はたくさん露出をかけることが出来ないため、星が止まった写真だと写る星の数の少ないちょっと画面が寂しい仕上がりになりますが、星の日周運動の軌跡を写す形の写真ならばかなり見栄えのする写真も作れます

フィルム時代にはこのタイプの写真を撮影するには30分~数時間シャッターを開けっぱなしにする必要がありましたが、デジタルカメラならばフォトレタッチソフトなどの「明合成」機能が使えます。

インターバル撮影で数秒程度露出時間の、本来星を写すには比較的短め露出の撮影を何度も行なってあとから合成することで、星が移動していく軌跡を写した写真を作ることが出来ます。

このタイプの写真ではあまりたくさんの星が写りすぎると逆に画面がうるさくなってしまいますので、1回の撮影は露出を抑えて写る星の数を減らす方が画面のバランスが整いやすくなります。

こちらがこの方法で撮影した星の日周運動の軌跡です。(上にうっすら写っているのは雲です。左下は著者宅への電線)

露出はISO800でF5.6、シャッタースピードは8秒。20秒間隔で30回シャッターを切って10分の動きを明合成で1枚にまとめています。カメラにインターバルタイマー撮影機能があると、お任せで撮影できます。

一部の高級コンパクトデジカメではカメラ自体がこの撮影方法を行えるようになっていますので、そちらを活用するとより楽に撮影が行えると思います。

どこでも狙える天体系の被写体は?

もっとお手軽に都会でも狙える天体系の被写体としては、月、木星、金星、そして国際宇宙ステーションがあります。

これらはとても明るいので、場合によっては望遠レンズを使っても手持ち撮影で写すことが可能です。月ならばオートフォーカスも効くかもしれません。

月のクレーターは換算300mm程度の望遠レンズから存在が分かるようになります

35mmフルサイズ換算で800mmの超望遠レンズを使うと、実は今の高画素デジカメならば木星の縞も見える写真が撮れてしまったりします。また、国際宇宙ステーションの形が分かる写真も狙えます。

このあたりは作品作りと言うよりも完全にお遊びにはなりますが、チャレンジしてみるのも楽しい被写体ですよ。

まとめ

実はフィルムカメラ時代には、星の撮影は今以上に難しいものでした。

フィルムには露出時間がとても長くなると(数十秒以上)実効感度がどんどん低下していく特性があります。このため2倍の露出時間をかけても星が2倍明るく写ることがなかったのです。

デジタルカメラならばその心配はいりません。やり方を理解していいロケーションさえ見つかれば、フィルムカメラの時代よりもずっと簡単に星や天の川を撮影することができます。

大都会にお住まいの方だと天の川が見える場所まで出かけるのがちょっと大変かもしれませんが、写真を撮りつつのんびりと夜空を眺めてみるなんていうのも、たまの息抜きにはとてもいいものになると思います。