広角レンズ、特に超広角と呼ばれるレンジのレンズを使って撮影を行なうと、遠近感の誇張などが簡単に起こります。

同じ効果を出す形で背の高いオブジェクトを仰ぎ見るように撮影すると、上側がすぼまった形に変形して写ります。焦点距離が短くなるほど変形具合は強烈になっていきます。

この効果は「超広角らしさ」を簡単に出す上でとても有効でそれだけでも面白い効果ではあるのですが、そればかり使っていたのでは型にはまった写真ばかりになってしまいがちです。

また、シーンによっては被写体をあまり変形させたくない場合もあるでしょう。

こういったケースで被写体の変形を抑える撮影方法には「シフト」効果を使った撮影があり、そのためのレンズも製造・販売されています。

ですがシフトが使えるレンズは一般にかなり高価なレンズが多く、本格的に活用を考えているユーザー以外には導入のハードルはちょっと高めです。

実は、このシフト効果を撮影の工夫+トリミングで擬似的に実現する方法があります。

今回はこの疑似シフトとも言えるような効果の出し方をまとめてみます。

原理は簡単

この疑似シフト効果の使い方、理屈が分かってしまえば実に簡単な方法で実現することが出来ます。

被写体を仰ぎ見るように撮影したときに起こるタイプのパースのかかり方、被写体の上側がすぼまるように写る変形はカメラを上に振ることで発生しています。

ですので、カメラを上下方向に水平に構えることでこのタイプのパースは消えます

被写体に正対する」という表現の方がより正確かもしれません。

電子水準器も活用してキッチリ水平を出すと、超広角レンズを使っても一見それと分からない整った画面構成を取ることが出来ます。

その代わり、多くの場合は画面下半分が目的の被写体以外の何かで占められてしまい、フレーミングとしてはかなり目的からは外れた構成になってしまいやすくなります。

ですが元データの作り方としてはこれでOK。

あとは後処理で、本来の目的の被写体とその周囲を狙った構図になるようトリミングします。これだけで疑似シフト効果を出した写真が作れます。

カメラ本来の解像度を活かし切ることはできなくなりますが、今の高画素デジカメであれば、多少のトリミング程度ならば、切り出した画像にもまだまだ十分な解像度が確保できます。結果的にほとんどの用途に十分に使える画像データを作ることが出来ます。

撮影の実際

SLを撮影するケースで具体例を以下に載せてみます。

比較的パースが目立ちにくくなるはずの横アングルでも、SLを普通の構図のバランスで同じレベルから撮影すると、その巨大さからどうしても見上げるようなフレーミングになります。

超広角レンズを使うと、わずかにカメラを見上げる角度としただけで、盛大にパースがかかってSLが変形してしまいます。

SL本体をキレイな形で撮影したいならば、カメラを上下方向に対して水平に保ち撮影を行ないます。

そうすると当然、余白部分のバランスは崩れて、トリミングを行なわない状態では、かなり悪いフレーミングの例になりそうな画面のバランスになります。

ここからSLの周辺の必要な部分だけを切り出すことで、

SLに正対して撮影したような変形の小さな写真を仕上げることが出来ます。

後ろに引くスペースのないロケーションではどうしても超広角レンズに頼らざるを得ないケースが出てくると思いますが、そういった場合でも被写体の変形を抑えたい時には、有効な解決策の一つになってくれるはずです。

あくまで「疑似」なので、もちろんデメリットもあり

ホンモノのシフト撮影とは異なりあくまでシフト効果を擬似的にまねているだけですので、この方法にはデメリットもそれなりに存在しています。

一つ目は上にも書きましたとおりトリミング前提の撮影方法ですので、作成する画像にはカメラ本来の解像度を活かし切ることができません。非常に高い解像度・画質が求められる場合には、そちらのファクターが不足となる可能性があります。

また、完全に上すぼまりの変形を補正するには、原理的には画面の下側を最大半分を捨てることになります。このため超広角レンズを持っていたとしても撮影の自由度にはかなりの制限がかかります。

場合によっては、高い建物を納めきることが出来ないケースも出てきます。

これらの制限事項的なものは撮影を行なう前から頭に置いておくと良いでしょう。

シフト効果も「いい塩梅」がキーワード?

シフトレンズを使った本来のシフト効果でも同じですが、建物撮影で完全に上すぼまりの変形を補正しきってしまうと、構図によっては逆に建物の上側が広がっているように錯覚してしまう絵柄になることがあります。

建築物の完成予想図のような絵柄を目指す場合には完全に補正しきって大丈夫ですが、一般的には少し上すぼまりの変形を残した方が見え方は自然になります。画面から違和感を感じにくくなるはずです。

そういう意味ではシフト効果もPLフィルターの効かせ具合などと同様に、効果最大で使わない方が良いケースもある、ということが言えるかもしれませんね。

何事も「いい塩梅」が大切かもしれません。