タムロンのSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USDのレビューを行ないました。

このレンズは600mmまで望遠端が伸びたズームレンズの先駆けで、従来600mmというとカメラメーカー製のまさしく大砲のような巨大で高価なレンズしか存在しなかった状況を打ち破るパイオニアとなった製品です。

ネイティブに600mmという焦点距離を手にするのに必要な予算をほぼ丸々1桁引き下げてくれた画期的な製品でした。

現在は各所のブラッシュアップを図った「G2」がデビューしていますが、そのベースとなった製品でもあります。

スペック

まずは簡単にスペックから。

レンズ構成は13群20枚構成。光学式手振れ補正機能を持つため、レンズ枚数が多めの構成になっています。

このうち異常低分散(LD)ガラスのレンズを3枚使用して、軸上色収差を効果的に補正しています。

コーティングには、定評のあるeBANDコーティングとBBARコーティングを使い分けることで、ゴーストやフレアの発生を抑えています。

光学式手振れ補正機能にはタムロン独自のVC(Vibration Compensation)を搭載。効きの良さには定評があります。

オートフォーカス駆動にはUSD、いわゆる超音波モーターを採用。高トルク、高レスポンスのモーターが高速AFの実現に寄与しています。

また、超音波モーター搭載レンズの多くで採用されるスペックですが、モード切替無しのマニュアルフォーカスがこのレンズでも可能になっています。オートフォーカスモードでの撮影時のピント微調整に役立ちます。

フィルター径は95mm。

レンズの長さはニコンマウントで257.8mm、最大径は105.6mmとなります。重量は着脱式の三脚座を付けた状態で1,951gです。

絞りはボケ味などにも配慮した9枚の円形絞りを採用しています。

外見など

手元のキヤノンEF70-200mm F2.8L IS USM(I型)と比較するとこんなサイズ感です。


150mm時には思いの外コンパクトで、ちょっと大きめのショルダータイプのカメラバッグにはギリギリ収まる長さだと思います。

サイズ・焦点距離レンジ的に当然ではありますがこの製品はインナーズームではありませんので、600mmまでズームするとさすがのボリュームになります。


振り回す際のスペースには少し気をつけないといけない長さになるかもしれません。

本体はズームリング、フォーカスリング部でもある程度の太さがあり、手の小さめのユーザーだと掴む際に少し持て余し気味になるかもしれません。

成人男性の普通の手のひらの大きさだと思う著者の手の場合には、ズームリング部は普通にガシッと掴める感触で持つ際に不安は感じません。


また、三脚座の内側に指掛かりが設けられていて、実使用の際にはこの部分をグリップ代わりにして持ち運ぶのがいい感じです。

実際に手にしての操作感

では次に実際にこのレンズを使ってみた感触をまとめていきます。

ズームリング、フォーカスリングの感触

ズームリング、フォーカスリングの操作は非常に滑らかです。操作の際のガタもなく、適度なトルク感があって気持ちよく操作できます。


これだけ大きく鏡筒先端が伸縮する機構を持っているのに、ズームリングを回すトルクがほとんど変化せずスムーズなままなのにはちょっと感心しました。

バランス・重量感

望遠側にズームすることで先端部がググッと大きく伸びるタイプのレンズですので重量バランスはかなり変化するはずですが、ニコンのD800Eとの組み合わせで使用する範囲ではバランス変化はあまり気になりませんでした

ちなみに、三脚座を手のひらに載せズームリングに指をかける持ち方をしています。

レンズの自重が2kgほどあり、カメラボディーと組み合わせると3kgを超えるぐらいの重さになりますが、ハンドリングは思いの外良好です。

バランスの良さはボディーが重量級のD800Eだったこともあるかもしれませんが、デジタル一眼レフと大柄な望遠レンズなどを普段から活用しているユーザーならば、あまり違和感なく振り回せると思います。

一つ注意した方が良いのは風がある時には、フードが結構風にあおられてぶれやすくなったりフレーミングが行ないにくくなるケースがあることです。

これは、大きめのフードを持つレンズ全てに共通の悩みではあるのですが。

AF速度

オートフォーカス速度はカメラボディー側の性能にも依存する部分がありますが、少なくともこのレンズとD800Eの組み合わせならば、実用上ほとんど問題のない速度が出ていると思います。

600mmの望遠端でも十分高速で、大デフォーカス状態からもほぼ迷いなくスッとピントが来るのが好印象でした。

かなり強い逆光の条件でも撮影してみましたが、そういったAFには厳しい条件でもフォーカス動作に迷いが見られず、ちょっと驚きました。

ブレ限界

タムロンご自慢の光学式手振れ補正機能のVCは噂通りに非常に良く効きます

ファインダーを覗いてVCが動作開始した時点で、「あ、止まりそう」という感触を得られます。撮影の安心感に繋がりますね。

ただやはり実焦点距離600mmと高画素のD800Eの組み合わせはハードルが高めで、VCを持ってしてもかなり本気で撮る側が止めにかからないと、手持ち撮影は難易度が高くなるシチュエーションも出ます。

ただし少なくとも著者の場合には、600mm端でも1/250秒ならばほぼ確実に使える画像がものに出来ました。


D800シリーズの場合、画素ピッチ的にはAPS-Cサイズセンサー搭載の1,600万~1,700万画素機に相当するぐらいの画像の精細さになりますから、一般的に言われる手振れ限界のシャッタースピードよりも1段ぐらい高い数字を基準とした方が良さそうです。

このレンズの望遠端ならば基本は1/1000秒と考えるぐらいでしょうか。

厳密にはガッチリ三脚で固定して撮るべき焦点距離レンジのレンズですが、このハンドリングの良さならば動きモノ目標でどんどん振り回したいタイプの製品でもあります。

事前にじっくり試写を行なって、ご自身の手振れなどの限界を見定めておきたいところですね。

また、今のデジタル一眼レフならばISO800や1600と言った領域は常用可能な画質がありますから、ブラしてしまうよりもISO感度を上げてシャッタースピードを稼ぎ、きちっと止めた写真を作る方がずっと結果は良くなります

実写での画質

こちらの節で実写でのインプレッションをまとめます。

いくつもの美点のあるレンズですが、価格と焦点距離を考えると間違いなくお買い得と言える仕上がりのレンズです。

解像感

150mm~400mmぐらいまではにじみもほとんどなく、完璧といっていい結像能力があります。


そこから先の焦点距離になると若干にじみを伴い始めますが、主線の描写がしっかりしているため、撮影する題材にもよりますが600mm端でもかなり整った描写をしてくれます。


こちらの写真のコントラストが低めなのは、湿度が高く若干もやのあるような空気の状態だったからです。

これぐらいの超望遠レンズになると被写体までの距離が開きがちで、間にある空気の動き、透明度などの影響が無視できなくなります

遠距離の被写体の場合には、レンズ本来の能力の評価は非常に難しことを実感しました。

こちらの写真はかなり気温の低い中での撮影ですが、晴れて日差しが出てきたために陽炎のような揺らぎが出始めてしまっています。


そういった描写を狙う写真としては面白いのですが、レンズの絶対性能を発揮しきることは出来ていない訳です。

このレンズは600mmレンズとしては近接能力が高いので、軽いテレマクロ的な使い方も可能ですが、こういった距離、こういった被写体ならばドットバイドットで見てもかなり良好な画質が得られています。

ボケ味

どの焦点距離でもイヤな癖の少ない、かなりキレイなボケ方をしてくれるレンズです。

焦点距離、絞りの値によってはハイコントラストな被写体をぼかした際に、わずかに二線ボケっぽい出方をするケースもない訳ではありませんが、そういったケースの方がまれだと思います。


また円形絞りのおかげで、多少絞った程度ならば玉ボケもとてもキレイに丸くなります。

絞りF8、焦点距離150mmだと周辺写野まで完全に丸い玉ぼけになりますね。


絞りF8で600mmまでズームすると、さすがに周辺部では口径食の影響でラグビーボール型になりますが、ボケの丸さは維持されています。


この撮影の際にかなり厳しい逆光条件の中で撮影を行ないましたが、フレアっぽさのない非常にヌケの良い仕上がりになったのもちょっと驚いたところです。

まとめ

やはり600mmという焦点距離から見える世界はすごいな、と言うのがSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USDを試してみての正直な感想でした。

遠くのものは何を撮影しても面白いのですが、その距離の分、空気の揺らぎの影響をもろに受けて完全な描写を得るのが難しくなります。そのあたりもこのレンズの使いこなしのうちなのかもしれません。

この価格帯で600mmに手が届く製品となったというのは、やはり画期的なことだと思います。撮影できる世界が非常に大きく広がりますから。

後継となったSP 150-600mm F/5-6.3 Di VC USD G2ではさらに光学性能の見直し・強化が行なわれているようですから、より期待の持てる製品になっていそうですね。