レンズの種類ごとに得意ジャンルを上げる際には、望遠レンズの特徴の一つとして「圧縮効果」を出しやすいことがほぼ必ず言及されると思います。

この効果を使うといかにも望遠らしい絵作りや、この効果だけでしか出せない雰囲気の写真が撮れるようになります。

では圧縮効果はどのように撮影を行なえば効果的に使うことが出来るでしょうか?

そのあたりを原理から含めてまとめてみます。

圧縮効果の原理

まず最初に圧縮効果の原理的なものから説明しますが、初めに触れておかなくてはいけないのが、「圧縮効果とレンズの種類とは何の関係もない」というところです。

望遠レンズで圧縮効果を活かした写真を撮りやすいのは事実なのですが、圧縮効果は望遠レンズに特有の現象ではありません。この部分は覚えておきましょう。

圧縮効果というのは、遠距離にある物体などの遠近感が弱くなる現象のことを言います。

ですので、広角レンズで撮影した写真でも遠景をトリミングしてみると、しっかりと圧縮効果の出た画像になります。

この辺りの原理的なものを模式図にしてみるとこんな感じです。


同じ物体でも遠くにあるものだと、手前側の見かけ上の大きさ(視角)と奥側の見かけ上の大きさの差が小さくなります。

近距離にあるものだとこの見かけ上の大きさの違いが広がり、見た目上は後ろ側が大きくすぼまっているように見えます。

この違いが視覚上の「遠近感の違い」になって現れます。これが圧縮効果の原理です。

なぜ望遠レンズが圧縮効果を活かした写真を撮りやすいとされているかと言えば、望遠レンズを使うと圧縮効果のかかっている遠方の風景を見やすい大きさに切り出して撮影するのが容易になるからです。

繰り返しにはなりますが、望遠レンズの何か特有な能力で圧縮効果が出る訳ではないのです。

遠景ならば圧縮効果が感じられるという実例

では実際に圧縮効果が比較的分かりやすい画像でその実例を見てみましょう。

1枚目はある地点からほぼ標準レンズの画角で撮影した画像です。


結構パースが効いた感じで、前景から見ていくと圧縮効果の欠片もない感じになっているのではないかと思います。

こちらは同じ場所から、35mm換算320mmほどのレンズで撮影した画像です。


電柱や電線がギュッと重なる雰囲気に圧縮効果が出ていると思います。

では、1枚目の画像の中から、2枚目の画像とだいたい同じぐらいの領域をトリミングしてみるとどうなるでしょう?

それがこちら。


遠近感に関しては、2枚目と同様に前後がギュッと圧縮されたように見えませんか?

これが圧縮効果の実際です。

単純に圧縮効果の出た画像が必要なだけならば、望遠レンズがなくてもなんとかなると言うことですね。

今の高画素なデジタルカメラであればWeb掲載用など解像度が低くて良い画像ならば、広角レンズで撮った画像のトリミングでかなりの範囲をカバーすることも可能です。

ただ、上の例もそうなのですが、実質かなりの強拡大を行なう形になりますので、高い画質/画素密度/解像度が必要なケースでは、やはり望遠レンズを使った方がより簡単に質の高い画像を作ることができます。

圧縮効果のかかった部分を含む画像を作るには、フレームの中に奥行き方向の広がりを捉えた画面を作れば基本はOKです。平面的に画面を構成するのではなく、奥行きの要素を加えた3D的な画面を作る、と考えると良いでしょう。

別の意味から遠近感が消えるケースも?

ただ、図形のすぼまり具合からのみ遠近感の喪失を感じる、という訳でもないですよね。

こちらの写真では奥の白い建物のすぐ後ろに山が迫っているように見えると思います。


実際には、撮影ポイントから白い建物までは約1.5km、建物から奥の山までは2.5km近くの距離があります。

奥の山に関しては図形の変形具合などから遠近感を感じている訳ではないですから、それ以外の要因で見た目上、距離を近く感じているのだと思います。

こちらは著者の想像に過ぎませんが、恐らく山の木々のモリモリっとした雰囲気などは、目で見たときにどれぐらいの大きさに見えるとどれぐらいの距離になるのか、頭に経験的に染みついたイメージがあるのではないかと思います。

そのイメージから直感的に予想する木々の大きさよりも背景の山の木が大きく映り込んでいるため、距離の感覚を「騙す」ような形になっているのでしょう。

脳内に出来ている距離感のイメージと、写真に写り込んでいるモノの大きさの差とのギャップから生まれるのが圧縮効果とも言えると思いますので、こちらの写真から感じる距離感の喪失も元々根っこは同じ、とも言えるかもしれませんね。

圧縮効果の活きる撮影シーン

圧縮効果がよく利用される例の一つはこういった鉄道の写真の撮り方があるでしょう。


接近してくる列車などを遠めの距離から望遠レンズで撮影することで、パースによる列車の後ろ側のすぼまりの少ない写真を作って列車本来の形のイメージを伝えやすくなります

カーブや線路の上下方向のうねりなどと長大編成の列車を組み合わせると、非常に面白いフォルムを写し取ることも出来ます。

また、人波の賑わい具合を強調するために、街の風景を遠めから切り取る撮影方法もよく使われるパターンでしょうか。

奥行き方向の遠近感をギュッと凝縮することで、実際よりも人が多く出ているような雰囲気の演出が出来るようになります。

ブルーインパルスなど、アクロバット飛行チームの飛行展示の編隊飛行で「密集感」の表現にも役立ちます。

さらに最大限に圧縮効果を使った、一種究極とも言える表現がこちらの画像です。

Hiroshi Sugiyama

見た瞬間は合成か?とも思われるような絵柄かもしれませんね。

撮影方法ですが、月の見かけの角度はわずかに30分(1度の半分)しかありませんので、重ねる被写体が月の大きさとほぼ同じぐらいになる遠い撮影ポイントを探す必要があります。あとは、月の場所・角度を事前に調べておくことが必須になります。

撮影難易度は高めですが、非常に印象的な写真を作り上げることが可能なテクニックです。

ちなみに、軽自動車のTV CMでも有名になった通称「ベタ踏み坂」も、実は圧縮効果によるマジックです。実際に走行する際にはそれほど強烈な上り坂ではないのだそうです。

そういった面でもさまざまなスパイスとして活用できるのが圧縮効果、とも言えますね。

1カットの中に奥行き方向に広がりのある構図を選んで望遠レンズを使った撮影を行なえば、意識せずとも簡単に効果は引き出せますからぜひ色々なシーンで活用してみましょう。

シェア
前の記事【イスラエル】三大宗教の聖地
次の記事三脚のリフレッシュ!
azure
カメラ歴だけは著者本人も驚くほど長くなりました。(30年以上に..) 北海道の田舎町で自然の風景を毎日楽しんでいます。