今の高画素で解像力が非常に高まっているデジタルカメラは、微少なブレに非常に敏感になっています。

なんだかこのレンズ写りが甘いな?と言う際には、レンズ自体の性能を疑う前に、手ぶれには見えないレベルの微妙なブレ(微ブレ)を疑った方が良いぐらいにまでに撮影がシビアになっています。

例えば、35mmフルサイズセンサー搭載機で最も画素数の多いEOS 5Dsシリーズだと、画素ピッチはEOS 7D MarkIIなどに採用されるAPS-Cサイズのイメージセンサーと同レベルまで微細化しています。

APS-Cサイズセンサー搭載機では手ぶれの大まかな基準を考える際には「換算焦点距離」でイメージを作ると思いますが、画素ピッチのことを考慮に入れるならば35mmフルサイズ機でもAPS-Cサイズセンサー搭載機と同レベルでシャッタースピードの基準を考えないといけない、ということになります。

そのあたりをきちんと対処しておかないと、微ブレでどこか締まらない写真を量産してしまいがちです。

このようにデジタルカメラの高画素化に合わせて手ぶれ基準が非常に厳しくなっていますので、日中の撮影でも手振れ補正機能への必要性がどんどん高まっていると思います。

今回は写真のクオリティを下支えしてくれ、撮影可能な領域も大きく広げてくれる可能性を持つ手振れ補正機能を取り上げます。

手ぶれ「補正」で手ぶれ「除去」ではない

 

まず手振れ補正の説明に入る前に一つ。

多くの方は既に実感としてご存じだと思いますが、手ぶれ補正はあくまで「補正」であることに注意しておきましょう。手ぶれ「除去」機能ではない、ということです。

また手ぶれ補正がうまく効いて十分な良像率を得られる範囲は、撮影する人それぞれの技量に依存しています。

誰が撮っても同じシャッタスピードまで撮影可能になる訳ではなく、それぞれのユーザーの手ぶれ限界から数段程度撮影可能な範囲が広がる形になります。

ラフな撮影を行なえば、手振れ補正があっても失敗写真は量産してしまうことになります。

手振れ補正の3つの方式

手振れ補正機能には今は大きく分けて3つの方式が存在します。

それぞれの方式のメリットとデメリットを簡単にまとめてみます。

光学式

光学式手ぶれ補正機能は、レンズ側の光学エレメントを使ってイメージセンサーに入る光自体を変化させることで、手ぶれをキャンセルしようとする仕組みです。

最初はレンズの前に角度を自由に変えられる液体プリズムを挟んで補正を行なう仕組みも存在しました。

今は、レンズの中の一部のレンズ群を光軸に垂直方向にシフトすることでレンズを通過する光を曲げています

この方式のメリットは、光学ファインダーでフレーミングを行なう際にも手振れ補正の恩恵にあずかれることがあります。特に望遠レンズを使う際のフレーミングが劇的と言っていいほどに楽になります。

デメリットとしてはレンズが大きくなってしまうことと、非常に厳密に見ていけば手振れ補正中はほんのわずかにレンズの描写性能が落ちることが上げられます。

また当然ではありますが、手振れ補正機能を内蔵していないレンズでは機能が使えないということもありますね。

イメージセンサーシフト式

イメージセンサーシフト式手ぶれ補正はその名の通り、ぶれの動きをキャンセルするようにイメージセンサーを微少かつ、非常に精密に動かすことで手ぶれを抑えます

こちらの方式のメリットは、全てのレンズで手ぶれ補正機能が活用できることが最も大きいと思います。このタイプの多くのカメラでレンズの焦点距離を登録すれば、オールドレンズでも恩恵にあずかることが出来ます。

かつてはイメージセンサーシフト式ではフレーミングの際にファインダーでは手ぶれ補正が効かなかったのですが、今の新しいミラーレス一眼ならばEVF経由でしっかりと手ぶれ補正が効いた中でフレーミングを行うことが出来るようになっています。

ペンタックスのデジタル一眼レフは光学ファインダーを採用しているため、フレーミング時に手ぶれ補正が効かないレンズがほとんどとなっています。

電子式

もっとも仕組みとしてシンプルに仕上がるのが電子式手ぶれ補正です。この部分がこの方式最大のメリットです。

余分な機構を搭載しなくても、ソフトウェア(多くは映像エンジンのファームウェア)だけで手ぶれ補正を実現することが出来ます。

デメリットとしては、通常の撮影ではイメージセンサーの面積をフルに使う画像を作ることが出来ないことです。

電子式ではイメージセンサーから画像を切り出す枠を設定。それをセンサー上で動かすようにして、トリミングする範囲をずらすイメージでブレを補正します。

このため電子式手ぶれ補正をONにすると、画角が狭くなるカメラがほとんどです。

スマートフォンの手ぶれ補正では電子式が使われることが多いです。

 

イメージセンサーシフト式手ぶれ補正の仕組みを使ったユニークな新機能たち

最近、機種数の面で主流になっているのはイメージセンサーシフト式の手ぶれ補正機能です。

こちらの機構では極めて精密にイメージセンサーの位置を制御できます

これを逆手にとって活用することで、プラスαの機能を盛り込むカメラが増えてきました。

この節ではそんなユニークな新機能をまとめます。

解像力アップ

こちらの目的でイメージセンサーシフト式の手ぶれ補正機構を活用したのは、オリンパスの「ハイレゾショット」が最初ではないかと思います。

半画素分ずつなどイメージセンサーをずらして撮影した画像を合成することで、実際のイメージセンサーの画素数以上まで解像力を高めた画像を生成する仕組みです。

メーカーごとに実現方法は異なっているかもしれませんが、基本概念は3CCD式のビデオカメラで使われてきた「画素ずらし」のイメージが近いと思われます。

演算処理が入るため完全ではありませんが、画素ピッチが半分になったのに近い解像力が得られるようになります。

解像感アップ

解像力アップと雰囲気は近いのですが、基本的には出力される写真の解像度が上がらない撮影方法がこちらです。

こちらの機能としては、ペンタックスの「リアルレゾリューションシステム」が最初に登場したと思います。

こちらは、1画素ずつずらして撮影した4枚の画像を合成することで全画素にRGB全ての色情報を持たせて、色情報の補完がない写真を生成するための仕組みです。

補完処理を排除できますので、それ由来の偽色、モアレなどを完全になくすることが可能です。

補完処理から来る解像感の低下からも開放されて、FOVEONセンサー搭載機並かそれ以上の解像感を持つ写真を撮ることが出来ます。

弱点は、こちらの仕組みも他社の解像力をアップする仕組みも、複数枚撮影する必要があるため撮影完了までにある程度の時間が必要になり、動きモノや風のある日の風景写真の撮影は向かない点が上げられるでしょう。

傾き補正、簡易赤道儀機能

こちらの機能は今のところ、イメージセンサーを回転させる方向にも動かすことが可能なペンタックスのカメラだけが実現できる機能です。

撮影するときのユーザーそれぞれの癖で、普通に構えるとわずかに必ず同じ方向に画面が傾いてしまうことがあります。

これをカメラが電子水準器の情報を活用して自動補正してくれるのが傾き補正です。

癖だけの問題ではなく、画面の中に水平または垂直の基準となる線がない場合には、結構な確率で画面に騙されてカメラが傾いてしまいがちです。

これをカメラがキャンセルしてくれるうれしい機能です。

簡易赤道儀機能は「アストロトレーサー」ですが、星の日周運動をイメージセンサーのシフトで追いかけてくれる機能です。

センサーを動かせる範囲は限られていますので追尾できる時間はあまり長くはありませんが、星空雲台などの赤道儀なしで星のある程度の長時間露出が行えるのが魅力です。

新しいトレンド、光学式とイメージセンサーシフト式の協調動作

最近、複数のメーカーが対応を始めたのが、光学式手ぶれ補正機能とイメージセンサーシフト式手ぶれ補正機能の協調動作です。

これによって手ぶれの補正量を大幅に高めてきています。最大6段分以上の手ぶれ補正をうたう機種も登場しています。

今のところ、従来イメージセンサーシフト式の手ぶれ補正を採用していた、オリンパスなどが実現しています。

パナソニックは同じマイクロフォーサーズ陣営でも光学式手ぶれ補正を使ってきましたが、この機能のためにイメージセンサーシフト式の手ぶれ補正機も搭載してきたような形になっています。

補正量が6段ともなると、一般的な夜景はかなりの部分を手持ち撮影でカバーできるほどの能力になります。

今後はこの方式の普及がより進んでいくことになりそうです。

現在、光学式の手ぶれ補正だけを使っているキヤノンやニコンがどう動くかも注目した方がいいジャンルですね。